投稿日:2019年7月26日
最終更新日:2023年7月3日
FOS夏の交流会NewYork

第7回 FOS夏の交流会 in NewYork(7月)

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WRITER 近藤幹子
事務局
事務局です!
第7回 FOS夏の交流会 in NewYork(7月)

第7回 FOS夏の交流会 in NewYork(7月)

毎年恒例の夏の交流会が2019年7月26日(金)から29日(月)に開催されましたので、その内容をレポートいたします。
昨年の交流会は西海岸ロサンゼルスにて開催されましたが、本年の開催地にはニューヨークが選ばれました。ニューヨークでの開催は第1回夏の交流会(2013年)以来2回目となります。今回の参加者の中には2度目のニューヨーク交流会となる方もいらっしゃいました。

会場はマンハッタンのミッドタウン中心部に位置し観光に便利なロケーションにあるThe Westin New York at Times Squareです。その名前の通りタイムズスクエアから2ブロックのところにあり、ブロードウェイ劇場、映画館、レストランなどニューヨークを満喫するのに最適な場所に立地するホテルでした。

今年は総勢49名の奨学生にご参加いただきました。(交流会参加者一覧はこちら)その内の9名がPh.D.を取得し世界各地で活躍している卒業生です。仕事を調整してニューヨークまで足を運んでくれました。交流会は学年の枠を超えて現役生と卒業生が知識や経験を共有し合える場です。卒業後も奨学生の一員として後輩達との交流の機会を持ってくれる彼らはありがたい存在です。

今回のゲストは今年のゲストはプリンストン大学元工学・応用科学部長、同大学シャーマンフェアチャイルド栄誉教授の小林久志先生です。
( 小林先生のホームページ:http://www.hisashikobayashi.com/jp_home.html
 小林先生のブログ:http://hp.hisashikobayashi.com/
通信理論の研究者としてだけでなく教育者として様々な分野で社会貢献をされてきた小林先生はニューヨークを活動の拠点とされております。年に数回は日本にもいらっしゃる大変ご多忙なスケジュールの中、交流会への参加をご快諾いただきました。27日の朝から28日のお昼まで、奥様もご一緒に奨学生たちと交流していただきました。
 
それでは交流会のスケジュールと内容についてご紹介していきます。

7月26日(金)

7月26日(金) イメージ

ホテル : The Westin New York at Times Square
( 270W 43rd St, New York, NY)各自チェックイン

19:00-顔合わせ夕食会(The Westin 9階 宴会場にて)

冒頭、益田業務執行理事より挨拶と乾杯の発声がありました。
今年の顔合わせ夕食会はブッフェ形式での提供とし、皆さんに食べたいものを好きなだけ選んで楽しんでいただきました。
一年ぶりに顔を合わせる方々もおり、再会を喜び合っている様子でした。

21:30-エンパイア・ステート・ビルディング観光

顔合わせ食事会終了後、徒歩でエンパイア・ステート・ビルディングへ向かいました。
ホテルからは20分弱で到着しました。
102階建ての高層ビルの86階部分(地上320メートル)にある屋外の展望デッキから360度のパノラマでニューヨークの夜景を鑑賞しました。

7月27日(土) ホテル会議室内にてミーティング

10:00-交流会開会の挨拶 益田業務執行理事より
10:30-小林久志先生のご講演、質疑応答

「1.日本の大学はどう変わるべきか?」「2.研究者としての心構え」というテーマで1時間半ご講いただきました。講演の内容をFOS2017の古賀祐海さんがレポートにまとめて下さいましたのでこちらからご覧下さい。(「小林先生ご講演レポート」)
12:00-昼食(The Westin 9階 宴会場にて)
13:00-討論会

昨年に引き続き、討論会が行われました。
昨年話し合った「日本における博士人材の活用の現状と問題点」の内容を踏まえ、今年は「学部教育の現状と問題点とその改善策」をテーマにグループディスカッションを行いました。
小林先生ご夫妻も奨学生のグループの中に入られ、ともに議論を交わされていました。
FOS2015の久門智祐さんが今年も司会進行を担当して下さいました。
討論会の内容については久門さんから詳細なレポートをいただきましたのでこちらからご覧下さい。(「討論会まとめ」)
14:45-奨学生研究発表 口頭発表1 (司会進行:FOS2016 田主 陽さん)

口頭発表の持ち時間は卒業生は一人20分、現役生は15分。専門外の人にも分かり易く工夫された発表がテンポよく展開されました。
小林先生はどの学生の発表にも強い関心をお持ちになり、熱心に質問されていたのが印象的でした。
以下に、発表者とタイトル、内容を掲載します。
  • FOS2013 中村拓磨さん Amazon Prime Air (Georgia Institute of Technology, 2018 Ph.D.)
    「Drone Navigation 101」:
    パイロットという人的リソースを用いないドローンは,より安全で効率のよい航空機として注目を集めている。
    ドローンのナビゲーション技術は,通常の航空機ではパイロットが担っている計器類や目視から現在の位置,姿勢,速度などを判断する計算をコンピュータが自動で行う必要がある
    そのようなナビゲーション技術に用いられる代表的なアルゴリズムを具体的な例とともに紹介した。
  • FOS2014 下 英恵さん Salk Institute for Biological Studies (University of Cambridge, 2019 Ph.D.)
    「生命の基本構造の可視化」:
    私たちの体は様々なタンパク質によってできている。
    それらの相互作用によって細胞運動や免疫応答が可能になっているが、具体的にどのようなタンパク質がいつ、どこで、どのような働きをしているのかを知るためには、まずそのタンパク質を可視化する必要がある。
    近年、超解像顕微鏡技術によりそれがこれまで以上に細かく観察できるようになってきた。
    本発表ではその技術を使った博士論文およびポスドク研究について紹介した。
  • FOS2015 武田航平さん London School of Economics (University of Cambridge, 2019 Ph.D.)
    「Uncertainty in the World: Brexit, Trade War, and Climate Change」:
    近年の時事問題を取り上げ、「経済学の見方」を説明した。Brexitについては、英国の物価指数、住宅価格指数、為替レートの過去3年間の変化をその理由とともに概観し、貿易戦争については、関税が消費者の厚生に与える影響を分析するToy modelに基づき、中国や欧米の報復関税が米国の消費者に与える影響が地域によって大きく異なることを示した。最後に、地球温暖化を例に、自然科学と経済学のコラボレーションの可能性について言及した。
  • FOS2015 磯野文香さん University of California, Berkeley
    「レーザープラズマ加速器 - ペタワットレーザーを用いた次世代加速器」:
    近年の時事問題を取り上げ、「経済学の見方」を説明した。Brexitについては、英国の物価指数、住宅価格指数、為替レートの過去3年間の変化をその理由とともに概観し、貿易戦争については、関税が消費者の厚生に与える影響を分析するToy modelに基づき、中国や欧米の報復関税が米国の消費者に与える影響が地域によって大きく異なることを示した。最後に、地球温暖化を例に、自然科学と経済学のコラボレーションの可能性について言及した。
  • FOS2015 青木俊介さん Carnegie Mellon University, CyLab
    「無線通信最後のフロンティア: コネクテッドカー (Connected Car)」:
    自動運転技術の一翼を担う車両通信に関しての社会実装の進展具合・国際標準についてレビューをした後に、(i) 交差点周辺での車両通信を用いた衝突回避、(ii) 車両通信を用いたエコ走行の2つのアプリケーションについて紹介した。
    車両同士の無線通信が普及・確立すれば、公道上での車両事故頻度を大きく減らせることが期待されている。
    また信号機などのインフラ側と車両を無線通信で結ぶことにより、自動運転車は詳細な信号機情報を得ることができ、よりエコな走行が可能になると見込まれている。
  • FOS2017 小松夏実さん Rice University, Department of Electrical and Computer Engineering
    「カーボンナノチューブのこれまでとこれから」:
    カーボンナノチューブは、その優れた電気的・熱的・光学的・機械的特性と一次元性により基礎・応用の両面から高い関心を集めてきた。
    長らくカイラリティの混在や膜内でのランダムな配列が課題だったが、近年カイラリティの分離とナノチューブの配向双方が可能となり、従来不可能だった現象の観測と理解が進みデバイス応用実現も眼前に迫ってきている。
    本発表ではナノチューブの配向技術を紹介した。
  • FOS2017 上原雅俊さん Harvard University
    「統計の研究とは?」:
    日本で統計学科がないせいか、統計の研究がどのようなものかあまり知られていない。
    前半では統計学のコミュニティの雰囲気やどのような研究があるのか話した。
    後半では具体例として今まで私がやってきた欠測データ、計算統計、強化学習の研究について話した。
16:45-奨学生研究発表 ポスター発表1
(発表者とタイトルはリンクからご覧下さい)

口頭発表に引き続き、ポスター発表がありました。
各自、自分の興味がある研究内容の発表に耳を傾けていました。
17:45-ホテルロビー集合、ディナークルーズ乗り場へ移動

貸し切りバスでホテルから港まで移動する予定でしたが、手配に手違いがあり予約したはずのバスが時間になっても来なかったため各自徒歩やUber・Lyftでの移動となりました。
19:00-ディナークルーズ “Bateaux New York Cruises”

夏の交流会恒例のディナークルーズです。
今回は想定外のトラブルで急遽ご自身で船まで移動していただくことになり、参加者の皆さんにご迷惑をお掛けしてしまいました。
出航時間までに全員が乗船できたのでホッとしました。
来年以降は同じことが起きないよう事務局内で対策を講じたいと思います。

さて、このディナークルーズはマンハッタン西側のハドソン川から出航し、自由の女神のあるリバティ島間近まで南下し、 その後マンハッタンの東側イーストリバーへと進んでいきます。
天井から壁まで全面ガラス張りの船で、3コースの食事を楽しみながらニューヨークのサンセットや夜景を眺めることができるクルーズプランです。
ニューヨークの街が夕焼けに包まれ夜景へと変わっていく様子はとても美しかったです。
その素晴らしい景色を水上から眺めることはなかなかできない経験です。
船の中ではジャズの生演奏をバックにダンスを楽しむ参加者の姿も!
小林先生と奥様もクルーズでの夕食会にご参加下さいました。

7月28日(日) ホテル会議室内にてミーティング

10:00-奨学生研究発表 口頭発表2 (司会進行:FOS2017 古賀祐海さん)
  • FOS2013 曽根 彬さん Los Alamos National Laboratory, Physics of Condensed Matter and Complex Systems Group (Massachusetts Institute of Technology, 2019 Ph.D.)
    「Probing quantum systems」:
    量子情報処理技術の実現に必要なロバスト制御、初期化、そして精密な測定は量子系の性質や時間発展に依存しており、現実では、与えられた量子系について、その系に関する情報が全て与えられたわけではなく、量子情報処理をする前に、これらの情報を抽出することが必要とされる。
    この発表では局所測定と合わせて線形システム理論や代数幾何学といった数理工学的手法を用いて、これらの情報を抽出する方法を理論的に探求した。
  • FOS2014 南出将志さん Jet Propulsion Laboratory, California Institute of technology/NASA (Pennsylvania State University, 2018 Ph.D.)「On the Predictability of Tropical Cyclones through All-sky Infrared Satellite
    「Radiance Assimilation」:
    2018年5月にペンシルバニア州立大学気象学科にて博士号を取得することができたので、今回の交流会では博士論文の成果をまとめて発表した。
    台風の予測を改善させるためには、台風内部の観測情報が有用であることが知られている。
    本研究では、ほとんどの場合唯一の情報ソースであるにも関わらず、従来ほとんど使うことができなかった、静止軌道衛星による台風内部の赤外画像観測データを数値予報に活用するための新たな手法を開発した。
    結果として、それらが台風予測におけるゲームチェンジャーとなり得るほどに、劇的な予測精度向上に貢献する可能性を示すことができた。
  • FOS2016 田主 陽さん Massachusetts Institute of Technology, Department of Chemistry
    「Molecular Design for Targeted Reactivity」:
    化学という分野の最もユニークかつ魅力的な特徴は、これまで存在しなかった物質を人工的に新しく創り出すことを課題解決のためのアプローチとして取る点にある。
    本発表ではクロスカップリング反応の新規触媒開発を例として、化学者が新物質をどのようにデザインしているかに主眼を置きつつ、量子力学・生物学・機械学習といった他分野との関連性の高さについても解説した。
  • FOS2016 苅田裕也さん University of California, Berkeley
    「生命とは何か -自己複製の集団ダイナミクス-」:
    生命とは何かを理解するうえで、生命を特徴づける性質を抽出したシンプルな数理モデルを考えることは有用である。
    本発表では、生物の持つ自己複製能に着目し、増殖する細胞集団の進化ダイナミクスを論じた。
    発表の最後には、現在発表者が取り組んでいる研究テーマとして、細胞が空間的に凝集している系の特徴的な振る舞いを紹介した。
  • FOS2015 釣巻瑶一郎さん Massachusetts Institute of Technology
    「熱ふく射を用いたエネルギー変換」:
    熱ふく射は伝熱形態の一つであり、熱ふく射を用いた機器の身近な例として太陽光を熱に変換して温水を作る太陽熱温水器などが挙げられる。
    今回の発表では近年注目されている熱ふく射を用いた応用として効率的な蒸気生成、熱ふく射を透過する素材からできた織物、そして太陽光を反射し物質を昼夜冷却するふく射冷却を紹介した。
11:45-奨学生研究発表 ポスター発表2
(発表者とタイトルはリンクからご覧下さい)

13:00-縦割りのグループに分かれて観光に出かけました。
左の写真は新しい観光名所となっているハドソンヤードに出かけたグループから拝借したものです。
ランドマークとなっている“VESSEL” 前で撮影した1枚です。
滞在していたホテルが劇場から近かったこともありミュージカルを観劇したグループもあったようです。
2019年春からブロードウェイで公開された新しいミュージカル “Tootsie” を観に行った奨学生の記念写真も併せてご紹介します。
右の写真は事務局スタッフが訪れたメトロポリタン美術館の画像です。
20:00-夕食会
「The View」(New York Marriott Marquis 47階)

最後の夕食会はウエスティンホテルからほど近いマリオットマーキースホテルのレストランで開催されました。
「The View」はニューヨークで唯一の回転式展望レストラン。約1時間かけて360度回転します。
お店の名前通りの美しい夜景を眺めながらニューヨーク最後の夜を満喫しました。
食事の後は各同期メンバーで記念撮影する様子が見られ、改めて奨学生同士の仲の良さを感じました。

7月29日(月)

最終日は各自朝食をとってからの散会となりました。来年の夏、再会することを誓い交流会行事の終了となりました。
以上、4日間のスケジュールと内容をご紹介しました。

奨学生からミーティング終了後のアンケートへ寄せられた声

参加した奨学生からミーティング終了後のアンケートへ寄せられた声を一部抜粋してご紹介します。

口頭発表について

「どれも素晴らしい発表だった。大学紹介・分野紹介が分かり易くて良かった。」
「発表の人数はちょうどいいが、1人当たりの発表時間が20分位均一であるといい。」
「質問の時間をより多く取ってほしい。」

ポスター発表について

「自分と同じ時間帯に発表している他の人のポスターを見たい。」
「同じ分野の発表は、できれば違う時間帯にしてほしい。」
「時間が短く、多くても2人の発表しか聞けない。」

討論会について

「とても盛り上がったので、時間が足りないくらいだった。」
「グループ別に優先して討論する箇所を決めるといいと思った。」
「交流としてはいいが、生産的な結論を出すには時間が短い。」

その他

「グループ分けされていて、今まであまり話したことのない人との交流も促進されてとてもよかった!」
「優秀な方々と接することができてとても刺激になった。」
「とても工夫されていて楽しかった!企画準備ありがとうございました!」

建設的なご意見、改善点、今後の参考にさせていただきます。

最後に、今回の学生発表やミーティングの企画準備運営にご尽力いただいた学生の皆さんをご紹介します。 FOS2015久門智祐さん、FOS2017古賀祐海さん、FOS2016田主陽さん、FOS2016鄭麗嘉さん、どうもありがとうございました。この場を借りて御礼申し上げます。

夏の交流会は、奨学生が研究室や職場を離れ、お互いの研究成果を報告し合うだけでなく、それぞれが抱える課題やプライベートな夢を語りあう貴重な時間となっています。
船井財団の奨学生は同期の横のつながりだけでなく縦のつながりも強く、年齢関係なく交流を深め様々な情報を共有し合っています。この奨学生同士のネットワークこそ財団の財産だと思います。
来年は財団設立二十周年の節目を迎えます。卒業生も現役生もお互いに良い刺激を享受しあえる良好な関係を継続していけたらと思います。

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