投稿日:2016年7月29日
最終更新日:2022年10月14日
夏の交流会

夏の交流会 in San Francisco(7月)

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WRITER 益田隆司
執行理事
夏の交流会 in San Francisco(7月)

夏の交流会 in San Francisco(7月)

2016年7月29日(金)から2016年8月1日(月)まで、第四回FOS交流会をサンフランシスコのホテル San Francisco Marriott Marquis で開催しました。

今回は、第一回目のニューヨーク、第二回目のワシントン、第三回目のロンドンに続き、第四回目になります。
今日は2017年3月9日であり、報告がすっかり遅くなってしまったことをお詫びいたします。

交流会に参加を呼びかけた者は、2009年度、FOS第1回の岩井孝介君からはじまって、2016年度のFOS奨学生として選考された者まで、合わせて61名です。
全員が学位取得を目指して留学した者です。

この時点ですでにPh. D. の学位を取得した者が5名います。
今回はその内の4名が参加しました。
ごく一部修士で修了した者もいます。
61名の内、42名が参加しました。

参加できなかった者の多くは、他の外せない用務と重なったことが、不参加の理由です。
参加は本人の自由意志ですが、多くの学生がこの交流会への参加をとても楽しみにしています。
参加に要する費用は、交通費を含めて全て財団が負担します。
新規に選考された学生の留学時期は大体は9月です。
交流会の時点では、まだ大学ははじまっていませんが、一部の学生はサマースクールへの参加のためにすでに日本を出ています。
昨年まではその年度新規に採択された学生には参加を呼びかけていませんでしたが、今回からは学生からの要望もあって、新規学生にも参加を呼びかけることにしました。
今回の例でいいますと、新規学生12名の内、8名が参加しました。
また、第一回目には Purdue大学ノーベル化学賞の根岸英一さん、第二回目には、つい先日京都賞を受賞されたカーネギーメロン大学の金出武雄さんをゲストとしてご参加いただきました。
昨年のロンドン、今年のサンフランシスコともゲストを考え、お願いしたのですが、日程調整がつかず、実現しませんでした。
ゲストの方には、ご講演だけでなく、交流会の期間中、ご参加いただき、学生との交流を深めていただくことにしています。

交流会に関して、外回りのこと、具体的にはホテルの予約、機器類の手配、レストラン、クルーズの手配などは、財団側で行いますが、土日,丸2日間の研究発表の企画、リクリエーションの企画などは、すべて学生に任せています。
昨年までは USC の長野光希君が企画班の中心になって働いてくれましたが、今回はHarvard大学で生物物理の研究をしている田中秀宣君がとても頑張って、交流会に新たな方向性なども盛り込んでくれました。
その田中君を種田修三君、磯野文香さん、永島航洋君たちがサポートしてくれました。
田中君をはじめとする企画に携わってくれた学生諸君の働きに心から感謝したいと思います。

ミーティング1日目

7月29日(金)
19:00-顔あわせ夕食会:The View Lounge ホテル39階(最上階)で立食パーティ形式で行いました。
 MIT航空工学でPh. D. を取得し、現在 UIUC(The University of Illinois at Urbana, Champaign)で Assitant ProfessorをしているFOS2011生の方弘毅君は新婚の奥さんを連れて参加しました。
7月30日(土)ホテル内1階メインロビーのレストランBin55で各自朝食後、10時からホテル内2階会議室Foothill Eでミーティングを行いました。以下当日の発表の概要を記します。
10:00-10:20 開会挨拶(益田)
10:25-10:45長野光希(USC:2012年度)
「ハイクオリティなデジタルヒューマンのキャプチャについて」:
人の顔のシワなどのディテールや目や口などの動きを詳細に3Dキャプチャするアルゴリズムとその応用について講演した。
10:50-11:10塩田佳世子(Yale University:2016年度)
「感染症疫学って面白いの?」:
抗生剤やワクチンなどの治療、予防法が確立されたことで、感染症による死亡者数は激減した。しかし、感染症は未だに社会に多大な影響を及ぼしうる。たとえばリオ五輪では、ジカウィルスが世界中に飛び火するのではないかと懸念され、開催地を変更すべきだと声が上がった。こういった問題を統計的、数理的に分析し政策決定に役立つような研究をするため、これまで東大の獣医学専攻、エモリー大学、CDC(米国疾病管理予防センター)にてどのような仕事をしてきたかを話した。
11:15-11:35田中秀宣(Harvard University:2014年度)
「進化する物質を目指して」:
工業技術が高度に発達した現代においても生物の豊かな機能性には目を見張るものがある。生物がそのような高度な機能性を獲得した鍵は、突然変異を伴う自己複製と遺伝的浮動または環境的要因による選択の繰り返しである“進化”というメカニズムにある。本発表では、DNAナノテクノロジーを用いてコロイドどうしの相互作用をプログラムすることで自己複製するコロイドクラスターを実現し進化論を物質科学に持ち込もうという理論的な取り組みについて解説した。
11:40-12:00西田祐木(CMU:2012年度、現在 Capio, Inc.)
「スタートアップの傾向と関わり方」:
ソフトウェアを軸としたスタートアップ(急成長を目指すベンチャー企業)の流行が一段落し、生物学などの研究開発を要する分野も含めた多様な分野のスタートアップが増えている。スタートアップとはどのような存在か、研究からスタートアップにどのような関わり方があり得るのか、方法や面白み、注意すべき点を、演者のスタートアップで働いてきた経験を織り交ぜながら紹介した。
12:00-13:00昼食 コールドランチブッフェ(サンドウィッチ)
13:00-13:20篠原 肇(University of Cambridge:2013年度)
「一次元フラストレーション系銅酸素鎖物質におけるドーピング効果」:
物質中のスピンが直線上に並ぶ際に作り出す「フラストレーション」と呼ばれる物質の現象を、磁石のN極やS極の関係や、物性物理学の固体合成の実験的な方法を、生活に身近なパンの作成などと絡めて発表した。
13:25-13:45武田悠作(Harvard University:2016年度)
「Higher Education in the US、アメリカの高等教育」:
日本の高等教育のグローバル化が叫ばれる今日、米国における大学教育を真似る動きが強くなってきているが、その教育の本質に迫る議論はあまりされていない。この発表はその本質に迫ることを試みた。アメリカにおける「リベラルアーツ教育」の歴史的考察を踏まえ、リベラルアーツの本質はコミュニティ単位のリーダー養成であり、日本でよく議論される制度的特性はそのための一つの方法に過ぎないと主張した。
13:50-14:10種田修三(University of Arizona:2015年度)
「世界ウルルン滞在記—植物サンプリング@パナマ」:
真菌類は抗生物質の産生などを通して人間の生活に大きく寄与しているにもかかわらず、現在確認されている種数が推定値のわずか 10 %程度にとどまっており、未だ謎の多い生物である。特に植物に内生する真菌類は多様性の宝庫と考えられているにもかかわらず、積極的に研究が行われているとは言いがたい。そこで我々は今回、新熱帯区のパナマ共和国にて植物内生菌類の多様性の探索を行い、そのサンプリングの様子について報告した。
14:15-14:35青木俊介(Carnegie Mellon University:2015年度)
「Self-Driving Cars:自動運転車の現状と将来像」:
カーネギーメロン大学Real-Time and Multimedia Lab(RTML)で開発している自動運転車のデモンストレーションの動画を交えながら、自動運転車の実現に必要となる要素技術、研究課題について紹介した。発表後、専門が遠い学生からも多くの活発な質疑があり、改めて自動運転車に対する注目の高さをうかがわせた。
14:40-15:00潮田 佑(The University of Chicago:2012年度)
Coffee Break を挟んで、15:15〜17:00 までは、発表者以外の全員による Poster Session が行われた。それぞれのところで活発な質疑があった。 17:00 にこの日のミーティングを終了し、一旦解散をしました。そして、18:30 にホテルロビーに集合し、Pier 3 まで全員で 30 分程を歩きました。19:00 発に乗船し、San Francisco Dinner Cruise (Hornblower Cruise) を楽しみました。Alcatraz Island を経て、Golden Gate Bridge までをゆっくりと、夕食をしながら回るクルーズでした。甲板に出るととても寒かったことが記憶に残っています。学生たちはクルーズの後も、ホテルの近くのどこかで遅くまで飲んでいたようです。

ミーティング 2 日目

7月31日(日)昨日と同じ場所でミーティング 2 日目です。
10:00-10:20方 弘毅(UIUC、Assitant Professor:2011年度)
「アメリカの Professor という仕事」:
自身の経験を交えて、アメリカのアカデミアの就職活動と Professor という仕事の内容について発表した。また、教員となった現時点から振り返って、学生の間にもっと意識しておいた方がよかったと思うことをまとめて発表した。
10:25-10:45鵜飼貴也(Purdue University:2015年度)
「宇宙開発の経済事情」:
宇宙探査機を打ち上げ、様々な観測を行うことは科学の発展のためにとても重要な試みだが、同時に莫大な費用がかかる。それをいかに抑えるか、いかに指定された予算の範囲に収めるかは大きな課題である。本発表では、昨今急速に発展しつつあるデータサイエンスの知見を生かした宇宙ミッションのコスト運用の方法について紹介した。
10:50-11:10生駒勇人(Stanford University:2012年度)
「Googleでのインターン生活」:
アメリカにおいて情報科学関連の就職先の代表ともいえる Google のインターン獲得方法とインターン中の生活について話した。海外の大学院では在学中にインターンをすることが一般的だが、日本から留学中に Google のような大手 IT 企業でインターンをしたという例はあまり見たことがない。
11:15-11:35金石大佑(UCB:2014年度)
「ウェアラブルロボットについて」:
一般に「ロボット」という言葉からは、ヒューマノイドロボットを連想されることが多い。そこで、ウェアラブルロボットについて概要を説明し、現在研究を行っているウェアラブルロボットの制御方法やユーザーの動作の推定方法について発表した。
11:40-12:00山田倫大(University of Oxford:2012年度)
「ラッセルのパラドックス(数学の危機とその帰結)」:
20世紀初頭に訪れた数学の危機、特にその中で中心的な役割を果たしたラッセルのパラドックスについて紹介した。また数学の危機がその後どのように数理論理学や計算機科学の発展に繋がったかについて説明した。

12:00 にミーティングを終了し、この日の午後は自由行動でサンフランシスコ観光でした。全参加者を予め、5〜6名の 8 つのグループ分けして、学生には自分がどのグループに属するかを知らせておきました。十分な観光準備をしていたグループもあれば、その場で適当に行き先を考えたグループもありました。私の知ったところでは、十分に準備していたグループの代表は、潮田、大滝、磯野、深見、村上のグループで、船で渡った Sausalito が素晴らしかったと話していました。私は午後適当に時間をつぶしてしまいましたが、潮田君たちと行動を共にしなかったことをとても残念に思いました。

そして、19:00 からは恒例の交流会最後の食事会が、Harris’Steakhouse(2100 Van Ness Ave)でありました。私はホテルから30分程かけて歩いて行きました。とても雰囲気のいいお店でしたが、Steakhouse

借り切っての夕食会でした。7〜8 人ずつが丸テーブルに座り、皆大いに話し楽しみ、また来年の再会を約していました。

8月1日(月) ホテルで朝食後自由解散としました。

今回の交流会に参加した奨学生、招待者などの参加者一覧、交流会風景の写真数枚を添付しておきます。交流会は2017年も開催する予定です。場所は現時点ではボストンを考えています。また、ゲストとしては、UCB教授、東大教授である村山斉氏にお願いして欲しいという希望が学生から出ています。次回もまた、多くの学生が楽しみに参加してくるに違いありません。学生にスカラシップを支援するだけでなく、こういった交流会を通して相互の交流を深めることが、われわれの財団の大きな特徴であると考えています。

交流会参加者一覧

交流会写真

Past Event
過去の行事